「新編 ごみから地球を考える」(八太昭道)

平城京の破綻はゴミ政策の失敗だった!

「新編 ごみから地球を考える」
 (八太昭道)岩波ジュニア新書

平城京の破綻は
ゴミ政策の失敗だった!
こういう切り口が、
私は大好きです。
ゴミ問題は奈良の昔から
あったのだということが
よくわかりました。

先日、生徒と一緒に
県庁所在地にある
ゴミ処理センターを見学してきました。
何でもそこのゴミ処理施設は、
日本でも数少ない
「ガス化溶融炉」であるとのことでした。
ゴミを高温で融かし、
スラグとメタルへ変換、
スラグはアスファルトに混ぜ、
道路の補修に活用、
メタルは金属資源として再利用する。
処理時に発生する熱エネルギーを回収し、
それを発電に利用する。
埋め立て処理する溶融飛灰は
ごく少量(焼却処理の約1/10)に
抑えられるとのことです。
私の住む地域のゴミ処理とは
全く違います。
でも、この処理方法が
必ずしも決定打でないところが
「ゴミ問題」の難しいところなのでしょう。

さて、その日程と
前後して読んだのが本書です。
またしても岩波ジュニア新書、
身近な問題に鋭く切り込んでいます。

筆者は、「ゴミ」は必ずでる、
というスタンスです。
人が生きるということは
「ゴミ」を出すということと
同質だからです。
その上で、ゴミを資源化し、
循環型社会を形成することにより、
ゴミ0(ゼロ)社会を実現することを
説いています。

循環型社会の構築は、
環境問題やエネルギー問題の
行き着く結論であり、
目新しいものではありません。
本書の特徴は、
その考え方について具体例をあげながら、
子どもが読んでもわかるように
説明していることです。

特に、
ゴミと都市の関係については
面白い見解が並びます。
古代の貝塚は人類最初の
ゴミ処理施設という見方に始まり、
平城京の破綻を
ゴミ処理政策の失敗と位置付ける。
社会とゴミの関係の未来像として、
「スターウォーズ」「風の谷のナウシカ」
「猿の惑星」を例にあげ、
ゴミ問題を解決できなかった場合の
地球の姿を提示する。
イメージが頭に浮かび、
納得させられます。

なお、本書には、
ゴミ処理費用をはじめとする
様々な「計算」が登場します。
首をかしげたくなるような部分も
確かにあります。
ネット上ではその点に
言窮している書評も散見します。
しかし、本書を
子どもたちが環境について考える
第一歩とできるならば、
そうした綻びは
些細なものでしかありません。

本書からスタートして、
同じ岩波ジュニア新書にある
「海はゴミ箱じゃない」
「アマゾンで地球環境を考える」
「バイオマスは地球環境を救えるか」等に
進むことができればしめたものです。
中学校1年生に強く薦めたい一冊です。

※参考までに章立てを
第1章 ごみから地球環境を考える
第2章 ごみから社会・経済を考える
第3章 ごみ行政で地球を救えるか
第4章 リサイクル産業で地球を救えるか
第5章 「ごみゼロ」の思想
第6章 地球を救う政治と技術

(2019.1.23)

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